【お笑い動画リンク】
アジアプロ野球・チャンピオンシップ。若手主体の侍ジャパンが宿敵韓国を圧倒、見事優勝を果たした。チームを率いたのは、2020年の東京五輪での金メダルを託された45歳の若き指揮官・稲葉篤紀。稲葉はプロ野球での監督経験が全くなく、実はこの大会が監督としての初陣だった。そんな稲葉が、優勝の翌日という多忙の中、我々のインタビューを快諾。全てを率直に語ってくれた。これまで代表監督は、長島茂雄、王貞治などプロ野球での監督経験豊富な名将が担ってきた。監督未経験者の就任は、2017年まで侍ジャパンを率いた小久保裕紀に続き2人目だ。2020年、3大会ぶりに五輪で復活する野球。自国開催でもあり、これまで以上に金メダルへの期待は大きく、就任当初から稲葉の下には、様々な声が届いていた。途轍もないプレッシャー。しかし稲葉は覚悟を決め、侍ジャパンの監督を引き受けた。そして、初めて挑んだ戦いの舞台裏。そこには待ったなしの国際試合の厳しさと若き指揮官の東京五輪への熱い思いがあふれていた。 2017年3月に行われたWBCで、侍ジャパンは準決勝で敗れた。次期監督として稲葉の名が浮上したのは、それから4か月後の7月のこと。しかしそのオファーは、稲葉にとって予想もしない突然の出来事だったという。 1995年、法政大学からプロ入りした稲葉は、ヤクルトの2度の日本一に貢献。その活躍は、北海道日本ハムに移籍後、更に花開き、首位打者、最多安打などタイトルを獲得。2012年には大打者の勲章、2000安打も達成した。ファンにも愛され、球場全体を大きく揺らす稲葉ジャンプは、札幌ドームの名物になった。また、信頼される人柄でチームリーダーとして慕われた。輝かしい実績と篤い人望。確かに監督にはうってつけだが、ただそれが、いきなり侍ジャパンであることに、ためらいを隠せなかったという。そんな、ためらう稲葉の背中を押したのは、意外にも野球関係者ではなかった。妻の言葉で解き放たれたのは、胸の奥にずっと燻っていた悔しさだった。 今から9年前、2008年の北京五輪。稲葉は、野球競技が最後となったこの大会で、代表の主力選手として金メダル獲得を目標に戦っていた。しかし、準決勝で韓国に敗退。金メダルは実現できなかった。稲葉はこの時の悔しさを片時も忘れたことはないという。絶対に雪辱する。稲葉は、そんな覚悟を胸に侍ジャパンの監督を引き受けると決意。記者会見に臨んだ。この時、稲葉を選んだ理由も公表された。選手として五輪、更にはWBCにも2度出場。それだけでなく、日本ハムでは兼任コーチも務め、なんと代表チームに現役選手であるにも関わらず、バッティングコーチとして召集。日本代表の指導を任された。小久保ジャパンを支えた国際試合での実績が評価されていた。 2017年11月8日。プロ野球のシーズン終了を受け、稲葉ジャパンの初めての合宿が行われた。稲葉ジャパンのこれまでと最も違う特徴は首脳陣の若さ。平均年齢45歳。監督のみならず、ほとんどのコーチが40代だ。これは、従来見られなかったことで、これまでの日本代表チームと比べ、首脳陣の若さが目立つ。そこには稲葉の狙いがあった。首脳陣が若いからこそ出来る選手との円滑なコミュニケーション。監督自ら選手に積極的に話しかけ、一人一人の個性を手触りで把握。プルペンでは自ら打席に立ち、バッティングピッチャーも買って出た。若手主体の今回は、こうしたコミュニケーション重視がゲームに生きてくると考えていた。合宿の最後には稲葉自ら提案し、スタッフまで集めた決起集会。監督就任以来、こうしたコミュニケーション重視の姿勢が、稲葉が最も大切にしていることに感じられた。この様子を、かつて日本代表で共に戦った里崎智也は稲葉らしいと分析した。2017年11月16日。侍ジャパンの監督・稲葉篤紀が、初采配となる国際大会に臨んだ。出場選手は24歳以下、または入団3年目以内の若手に加え、3人のオーバーエイジ枠が認められる。出場3か国が総当りで戦い、上位2チームが決勝に進出する。初戦の韓国戦。勝負は拮抗し、同点のまま延長10回に突入した。10回以降は、ノーアウト1・2塁から始まるタイブレーク方式。先攻は韓国。するといきなりの失点。さらに連打を浴び、この回一気に3点のリードを奪われた。その裏、窮地に立った稲葉が希望を託したのが、ソフトバンクの左バッター・上林。稲葉にとって彼は特別な存在だった。上林は大会前、クライマックスシリーズで左投手相手に不振に陥り、その後の日本シリーズでは、わずか1打席の出場にとどまった。しかし稲葉は、招集した上林にどんなことがあっても使い続けると明言。心中するとまで語った。ここまで上林はノーヒット。しかも相手は苦手なサウスポー。見事、値千金の同点3ランホームラン。強い覚悟が結果に結びつく。そして、侍ジャパンはこの回、攻撃をたたみかけサヨナラ勝ちを掴んだ。勢いに乗った侍ジャパンは、決勝に進出、再び韓国と対戦した。稲葉の選手を信じる戦術は、この試合でも発揮された。両チーム無得点で迎えた4回。ノーアウト1・2塁の場面。セオリーどおりならバント。しかし稲葉は、バッターの外崎にヒッティングを指示した。そしてこの日、投手陣も奮闘し、完封リレー。稲葉は初陣を優勝で飾った。 2020年東京五輪へ向け幸先よく走り出した稲葉ジャパン。悲願の金メダル獲得へ向けた戦いをこれからも応援し続ける。